投資用マンションの広告や物件資料には、たいてい「利回り◯%」という数字が載っています。ところが同じ「利回り」でも、何を引いて何で割ったかによって、数字は大きく変わります。広告の数字だけを見て比べると、思っていたより手元に残らない、ということも起こりえます。
この記事では、表面利回り・NOI利回り・実質利回りの違いと計算のしかたを、架空の例を使って整理します。あわせて、広告に載る「利回り」がどんな決まりで表示されているのかも、不動産業界の表示ルールをもとに確認します。
利回りは「1年間の収入」を「物件価格」で割った割合
不動産投資でいう利回りは、1年間に得られる収入が、物件の価格の何%にあたるかを表す数字です。たとえば年間の家賃収入が100万円で、物件価格が2,000万円なら、100万÷2,000万で5%となります。
ただし、家賃がそのまま手元に残るわけではありません。区分マンションなら毎月の管理費・修繕積立金がかかり、毎年の固定資産税や保険料もかかります。国税庁も、不動産所得は総収入金額から必要経費を差し引いて計算するとしており、固定資産税・損害保険料・修繕費などを必要経費の例に挙げています。どこまでの費用を引いた数字なのかで、利回りの意味が変わるのです。
表面・NOI・実質の3つの違い
よく使われる呼び方は次の3つです。違いは「分子から何を引くか」と「分母に何を足すか」にあります。
| 呼び方 | 割る前の数字(分子) | 割る数字(分母) | わかること |
|---|---|---|---|
| 表面利回り | 1年間の家賃収入(予定額) | 物件価格 | 価格に対して家賃がどれくらいか。費用は引いていない |
| NOI利回り | 家賃収入から空室分と運営の費用を引いた額(NOI) | 物件価格 | 建物を回すための費用を払ったあとに残る割合 |
| 実質利回り | NOIと同じ考え方の額 | 物件価格+購入時の諸費用 | 買うときにかかったお金全体に対する割合 |
出典:国土交通省「不動産鑑定評価基準」各論第3章第5節、一般財団法人土地総合研究所「投資用不動産のNOI利回りに関する実態分析」をもとに作成(確認日 2026-10-19)
表面利回り(グロス利回り)
1年間の家賃収入 ÷ 物件価格 × 100で求めます。計算がかんたんで、物件どうしを手早く比べるときに使われますが、空室や運営の費用は考えていません。
NOI利回り
NOIは英語のNet Operating Incomeの略で、家賃などの収入から、維持管理費・修繕費・公租公課などの運営費用を差し引いた額です。土地総合研究所の資料では、国土交通省の不動産鑑定評価基準でいう「運営純収益」にあたると説明されています。基準では、運営収益は満室を想定した賃料から空室等による損失を差し引いた額とされ、そこから運営費用を引いたものが運営純収益です。ローンの返済額と減価償却費は、この計算に入りません。
NOI ÷ 物件価格 × 100が、NOI利回りです。
実質利回り(ネット利回り)
費用を差し引いた収入を、物件価格に購入時の諸費用を足した額で割る考え方です。ただし、どの費用を引くか、諸費用をどこまで含めるかは資料によって違うことがあります。実質利回りという言葉を見たら、計算の中身を確かめるのが先です。
架空の例で3つの利回りを計算する
例:物件価格2,000万円の区分マンションを、家賃月8万円で貸す場合を考えます。費用の金額は、計算の流れを示すために置いた架空の数字です。
| 項目(例:架空の数字) | 年額 |
|---|---|
| 物件価格 | 2,000万円 |
| 購入時の諸費用(登記・仲介など) | 120万円 |
| 家賃 月8万円×12か月(満室のとき) | 96万円 |
| 空室で入らなかった家賃(1か月分と仮定) | −8万円 |
| 管理費・修繕積立金 月1.5万円×12 | −18万円 |
| 賃貸管理の委託料 | −4.8万円 |
| 固定資産税・都市計画税 | −7万円 |
| 火災保険などの保険料 | −1万円 |
| NOI(96万−8万−30.8万) | 57.2万円 |
※数字はすべて計算のしかたを示すための架空の例です。実際の金額は物件・地域・契約によって異なります。
この例で3つの利回りを計算すると、次のようになります。
| 利回り(例) | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 表面利回り | 96万円 ÷ 2,000万円 | 4.8% |
| NOI利回り | 57.2万円 ÷ 2,000万円 | 約2.9% |
| 実質利回り | 57.2万円 ÷ 2,120万円 | 約2.7% |
※上の架空の例をもとにした計算です。小数第2位を四捨五入しています。
表面利回りでは4.8%でも、費用と空室を織り込むと3%を下回る計算になりました。ここにローンの返済が加わると、毎月の手残りはさらに小さくなります。どの数字で判断するかによって、同じ物件の見え方が変わることがわかります。
広告の「利回り」は表面利回りで表示する決まり
不動産広告には、景品表示法にもとづいて公正取引委員会と消費者庁長官の認定を受けた業界の自主ルール「不動産の表示に関する公正競争規約」があります。その施行規則では、購入した物件を賃貸する場合の「利回り」は、1年間の予定賃料収入が取得対価に対してどれだけの割合かという意味で使うと定めています(規約第15条、施行規則第9条第46号)。
あわせて、次の3点を明示して表示することになっています。
- 1年間の予定賃料収入の、取得対価に対する割合であること
- 予定している賃料収入が得られると保証するものではないこと
- 公租公課など、物件を維持するための費用を差し引く前の数字であること
つまり、広告で見かける「利回り」や「想定利回り」は、原則として費用を引く前の表面利回りです。また、予定賃料収入に空室の期間が織り込まれているとは限りません。なお、消費者庁によると公正競争規約は自主ルールのため、規約に参加していない事業者には適用されません。
利回りの数字を見るときに確かめたいこと
- その利回りは、費用を引く前か後か(表面・NOI・実質のどれか)
- 家賃は、いま入居している人の実際の家賃か、募集予定の家賃か
- 満室で計算しているか、空室の期間を見込んでいるか
- 管理費・修繕積立金・委託料・税金は、いくらで計算しているか
- 修繕積立金の値上げ予定や、大きな修繕の予定があるか
分からない項目は、販売する会社に根拠となる資料を出してもらい、自分の手元で計算し直してみると、数字の意味がはっきりします。数字は契約前に書面で確かめておきましょう。
よくある質問
広告の「想定利回り」は、多くの場合、予定している家賃収入を物件価格で割った表面利回りの考え方で計算されています。表示ルールでも、広告の利回りは費用を差し引く前の数字であることを明示するよう定められています。どの家賃をもとにした数字なのかは、資料で確かめてください。
利回りだけでは判断できません。家賃に対して物件価格が低いと利回りは高く出ますが、立地や築年数、空室になりやすさ、今後の修繕費などが価格に反映されていることがあります。費用を引いたあとの数字と、物件そのものの条件をあわせて見る必要があります。
表面利回りやNOI利回りの計算には、ローンの返済額は入りません。借入れをして買う場合は、NOIからローンの返済額を差し引いた手残りを別に試算すると、毎月のお金の出入りがつかみやすくなります。
まとめ
参考にした資料
- 不動産公正取引協議会連合会「不動産の公正競争規約」(不動産の表示に関する公正競争規約 第15条・同施行規則 第9条第46号。令和4年9月1日施行の変更を含む版。首都圏不動産公正取引協議会 掲載)
https://www.sfkoutori.or.jp/webkanri/kanri/wp-content/uploads/2019/01/kiyak_zenbun.pdf(確認日 2026-10-19) - 消費者庁「公正競争規約」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/fair_competition_code(確認日 2026-10-19) - 国土交通省「不動産鑑定評価基準」(平成26年5月1日一部改正)総論第7章・各論第3章第5節
https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf(確認日 2026-10-19) - 一般財団法人土地総合研究所 土地総研リサーチ・メモ「投資用不動産のNOI利回りに関する実態分析~J-REITを例にして」(2021年5月31日)
https://www.lij.jp/news/research_memo/20210531_1.pdf(確認日 2026-10-19) - 国税庁 タックスアンサー No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」(令和8年4月1日現在法令等)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm(確認日 2026-10-19)

