子どもの家庭学習を考えはじめると、紙のドリルやワークにするか、タブレットで取り組む教材にするかで迷う方は少なくありません。この記事は、幼児から小学生までの子どもをもつ保護者に向けて、両方の形に共通する考え方をまとめたものです。
どの教材を選ぶかの前に、「そもそもわが子にはタブレットの形が合うのか」を考える材料として、紙とタブレットそれぞれの持ち味と、気をつけたい点を整理します。学校の教科書をめぐる文部科学省の資料も、考え方の手がかりとして紹介します。
国の議論は「紙かデジタルか」より「どう組み合わせるか」
学校の教科書については、中央教育審議会のワーキンググループが令和7年9月に審議まとめを出し、教科書の形として紙だけでなくデジタルも認め、紙・デジタル・両者を組み合わせた形から選べるようにする方向を示しました。文部科学省は、紙の教科書をなくすものではないと説明しています。
このまとめでは、紙の良さとして一覧性や俯瞰性があること、書く作業によって記憶や理解が深まること、体験的な活動の大切さが挙げられています。一方で、デジタルでは間違いを恐れずに何度も書き込んだり、図形やグラフを動かして試したり、発音を自分のペースで繰り返し聞いたりする学び方が広がっていると報告されています。
また、文部科学省の委託で行われた実証研究では、デジタル学習に慣れた児童を対象に、記憶・理解のテストや学力調査でデジタル教科書と紙の教科書が同じくらいの結果だったとされています。これは学校の教科書についての調査で、家庭用のタブレット教材を調べたものではありませんが、「どちらか一方が優れている」と決めつけず、場面ごとに使い分けるという考え方は家庭でも参考になります。
タブレット学習の主なメリット
文部科学省のデジタル教科書のガイドラインは、画面で学ぶことで可能になる学習方法の例を挙げています。家庭用のタブレット教材にどの機能があるかは教材ごとに違いますが、次のような点が持ち味になりえます。
- ペンで書いては消すことを、手間なく何度でも繰り返せる
- 書き込んだ内容を保存して、あとから見返せる
- 画面を拡大して、図や絵の細かいところを確かめられる
- 読み上げの音声や動く図で、文字だけでは伝わりにくい内容にふれられる
- 自分の理解に合わせて、音声や動画を繰り返し確かめられる
ガイドラインでは、文字の拡大や音声読み上げ、文字色・背景色の変更などは、読み書きに困難がある子どもなど、特別な配慮が必要な子どもにとって助けになる学習方法としても挙げられています。紙のプリントだと読むだけで疲れてしまう子にとっては、表示を変えられること自体が大きな違いになる場合があります。
タブレット学習で気をつけたい点
同じガイドラインは、学校でデジタル教科書を使うときの注意点も示しています。家庭学習に置きかえても考えておきたいのは、次のような点です。
- 手で文字を書く機会が減りやすい(ガイドラインは、漢字や計算の繰り返し、内容をまとめる場面ではノートを基本とするよう求めている)
- 画面の操作ばかりになり、実物にふれる体験が後回しになることがある
- 学習と関係ない画面に移れる端末だと、気がそれることがある
- 充電切れや故障、通信の不調で学習が止まることがある
- 画面を長く見続けることになりやすい
健康面の注意点、端末の利用制限の設定、解約時の端末代の扱いは、このコラムの別の記事でくわしく扱います。申し込む前には、端末代の有無や途中でやめるときの条件も書面で確かめておきましょう。
紙の教材とタブレット学習の違い
家庭で比べるときの観点ごとにまとめました。
| 観点 | 紙の教材 | タブレット学習 |
|---|---|---|
| 書く・消す | 鉛筆で書く。消しゴムで消すと跡が残る | ペンで何度でも書き直せる。書いた内容を保存できる教材もある |
| 見渡しやすさ | 見開きやページ全体を一度に見られる | 画面に入る範囲が限られる。拡大して細かい部分を見られる |
| 音・動き | 基本はなし(付属の音声などは別) | 読み上げや動く図など、教材によって音や動きがある |
| 準備と管理 | 冊子がたまり、置き場所や丸つけの手間がかかる | 充電や更新が要る。故障・通信の不調で止まることがある |
| 気がそれやすさ | 学習以外の情報は入りにくい | 学習と関係ない画面に移れる端末だと、気がそれることがある |
※一般的な特徴を整理したもので、教材ごとに機能は異なります。
どちらにも得意なことと手間のかかることがあります。「書く練習は紙、音や動きで理解したいところはタブレット」のように、両方を組み合わせる家庭もあります。
タブレットが合いやすい子・紙が合いやすい子の目安
向き不向きは年齢だけでは決まらず、同じ子でも教科や時期によって変わります。あくまで目安として、ふだんの様子と照らし合わせてみてください。
タブレットの形が合いやすい様子
- 絵や音、動きがあると内容をつかみやすいようだ
- 間違えるのを嫌がり、紙だと消しゴムの跡を気にして手が止まる
- 文字を読む・書くことに負担を感じやすく、拡大や読み上げがあると取り組みやすい
- 自分のペースで一人で進めることに抵抗が少ない
紙の形が合いやすい様子
- 書きながら覚える、手を動かすほうが集中できる
- ページ全体を見渡して、どこまで進んだかを確かめたい
- 画面があると動画やゲームのほうに気が向きやすい
- 保護者がそばで一緒に丸つけをする時間を大事にしたい
どちらにするか迷ったときの確かめ方
いちばん確かなのは、実際に子どもが使う様子を見ることです。通信教育には資料請求や体験の仕組みを用意しているものもあるので、紙・タブレットの両方を試せるなら比べてみましょう。そのとき、次の点を見ておくと判断しやすくなります。
- 説明を聞かなくても、子どもが自分で操作や進め方を理解できたか
- 画面の演出に気を取られず、問題そのものに向き合えていたか
- 書く場面で、ペン入力に戸惑っていなかったか
- 終わったあと、何をやったかを子どもが自分の言葉で話せたか
どちらの形でも、成績が決まるわけではありません。教材の形は、子どもが学びに向かいやすくするための道具の一つです。子どもの様子を見て、合わなければ見直せるくらいの気持ちで選ぶとよいでしょう。
よくある質問
教材によってはペンで書く問題もありますが、鉛筆で紙に書く感覚とは違いがあります。文部科学省のデジタル教科書のガイドラインでも、漢字や計算の繰り返し学習など書くことが大事な場面ではノートを基本とするよう示されています。書く練習は紙でも続けると考えておくと迷いにくくなります。
家庭用の教材どうしを公的に比べた調査は、今回確認した資料には見当たりませんでした。学校の教科書については、デジタルに慣れた児童を対象にした実証研究で、紙とデジタルが同じくらいの結果だったという報告があります。形よりも、子どもに合った使い方ができるかを見るのが現実的です。
併用している家庭もあります。国の審議まとめでも、紙とデジタルの良さを組み合わせる考え方が示されています。ただし教材を増やすと費用も取り組む量も増えるので、子どもの負担になっていないかを見ながら、どちらを中心にするかを決めておくとよいでしょう。
まとめ
参考にした資料
- 文部科学省「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」(平成30年12月策定・令和3年3月改訂)
https://www.mext.go.jp/content/20210325-mxt_kyokasyo01-100002550_02.pdf(確認日 2026-10-20) - 中央教育審議会 デジタル教科書推進ワーキンググループ「審議まとめ」(令和7年9月24日)
https://www.mext.go.jp/content/20250924-mxt_kyokasyo01-000045017_1.pdf(確認日 2026-10-20) - 文部科学省「【よくある質問】デジタルな形態も含む新たな教科書について」(令和7年12月24日)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/mext_03511.html(確認日 2026-10-20) - 文部科学省「学習者用デジタル教科書について」(ガイドライン・関連資料の掲載ページ)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/1407731.htm(確認日 2026-10-20)

