年長の後半になると、「入学までにひらがなは書けたほうがいい?」「数はどこまで分かっていればいい?」と気になる保護者は少なくありません。周りの子と比べて焦ることもあるでしょう。
この記事は、小学校入学を控えた幼児(年長さん)の保護者向けです。文部科学省の幼稚園教育要領や小学校学習指導要領など、国が示している資料をもとに、ひらがな・数・生活習慣について家庭で意識しておきたいことを整理します。
国が示す「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」とは
文部科学省の幼稚園教育要領(平成29年告示)には、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として10の項目が示されています。文部科学省の手引きによると、幼稚園教育要領・保育所保育指針・幼保連携型認定こども園教育・保育要領の3つは整合が図られており、幼稚園・保育所・認定こども園のどこに通っていても、同じ考え方が土台になっています。
| 10の姿 | 要約(原文を短くまとめたもの) |
|---|---|
| (1)健康な心と体 | 見通しをもって行動し、健康で安全な生活を自らつくり出す |
| (2)自立心 | しなければならないことを自覚し、工夫しながら諦めずにやり遂げる |
| (3)協同性 | 友達と思いや考えを共有し、共通の目的に向けて協力する |
| (4)道徳性・規範意識の芽生え | してよいこと・悪いことが分かり、きまりをつくったり守ったりする |
| (5)社会生活との関わり | 家族や地域の人と関わり、情報を生かしながら社会とのつながりを意識する |
| (6)思考力の芽生え | 物の性質や仕組みに気付き、考えたり予想したり工夫したりする |
| (7)自然との関わり・生命尊重 | 自然に触れて好奇心をもち、命あるものを大切にする |
| (8)数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚 | 遊びや生活の中で数量や文字に親しみ、必要感から使ってみる |
| (9)言葉による伝え合い | 絵本などに親しみ、経験したことを言葉で伝えたり、相手の話を聞いたりする |
| (10)豊かな感性と表現 | 感じたことや考えたことを自分なりに表現する喜びを味わう |
出典:文部科学省「幼稚園教育要領」(平成29年告示)第1章第2の3をもとに要約(確認日 2026-10-20)
幼稚園教育要領では、これらは幼稚園修了時の具体的な姿であり、先生が指導を行う際に考慮するものとされています。文部科学省の「幼保小の架け橋プログラム」の手引きでは、この姿が「到達目標と誤解され」ていることが課題の一つに挙げられています。つまり、入学前に全部できているかを確かめるチェック表ではありません。
ひらがな・文字は「読み書き」より「親しむ」体験から
10の姿の(8)では、遊びや生活の中で標識や文字に親しむ体験を重ね、その役割に気付き、自分の必要感にもとづいて使ってみる姿が描かれています。領域「言葉」の取扱いでも、文字などを使いながら思ったことを伝える喜びや楽しさを味わい、文字への興味や関心をもつようにすることが示されています。
一方、小学校学習指導要領(平成29年告示)では、国語の第1学年及び第2学年の内容に「平仮名及び片仮名を読み、書く」ことが入っています。ひらがなの読み書きは、入学後の国語の授業で扱う内容として位置づけられているということです。入学前は、上手に書けるかどうかよりも、文字があると便利だ、読めるとうれしいと感じる経験を増やすことが、要領の考え方に沿っています。
- 自分の名前や家族の名前の文字を、看板や絵本の中で探してみる
- 読み聞かせのあと、気に入った言葉を声に出して言ってみる
- おじいちゃん・おばあちゃんへの手紙や、買い物メモを一緒に書いてみる
数は「数える・比べる・分ける」を暮らしの中で
幼稚園教育要領の領域「環境」には、「日常生活の中で数量や図形などに関心をもつ」という内容があります。その取扱いでは、数量や文字について、日常生活の中で幼児自身の必要感にもとづく体験を大切にするよう求めています。机に向かって計算を練習するより、生活の場面で数を使う機会をつくるほうが、この考え方に近いといえます。
小学校の算数では、第1学年で、ものの個数や順番を正しく数えたり表したりすることや、1けたどうしのたし算とその逆のひき算などを学びます。入学後に学ぶ内容の手前として、家庭では次のような場面が使えます。
- おやつを家族の人数分に分け、足りるかどうかを一緒に確かめる
- 階段の段数や、信号を待つあいだの数を声に出して数える
- コップやひもを並べて、どちらが長いか・多いかを比べる
生活習慣は入学後の毎日を支える土台
幼稚園教育要領の領域「健康」には、健康な生活のリズムを身に付けることや、衣服の着脱・食事・排泄などの生活に必要な活動を自分ですることが内容として挙げられています。基本的な生活習慣の形成については、家庭での生活経験に配慮しながら、幼児の自立心を育てることも示されています。
小学校学習指導要領でも、特別活動で「身の回りの整理や挨拶などの基本的な生活習慣」を扱うことになっています。生活習慣は入学前に仕上げるものではなく、入学後も学校と家庭で続けて育てていくものです。入学前の家庭では、次のような点を意識しておくとよいでしょう。
- 起きる時刻と寝る時刻を、入学後の生活に合わせてそろえていく
- 着替え・トイレ・手洗いを、なるべく自分でやってみる
- 困ったときに「手伝って」「分からない」と言葉で伝える練習をする
小学校側も入学当初の受け入れを工夫している
小学校学習指導要領の総則では、小学校入学当初について、幼児期に遊びを通して育まれてきたことが各教科等の学習に円滑につながるよう、生活科を中心に、合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の設定などを工夫することとしています。いわゆるスタートカリキュラムと呼ばれる取組です。
また、文部科学省は令和4年度から「幼保小の架け橋プログラム」を進めています。義務教育が始まる前後の5歳児から小学校1年生までの2年間を「架け橋期」と呼び、園と小学校が連携して子どもの学びや生活の基盤を育もうとするものです。園と学校も準備をしているので、家庭がすべてを先回りして整えなくても大丈夫です。
よくある質問
小学校学習指導要領では、平仮名の読み書きは第1学年及び第2学年の国語で扱う内容として示されています。幼稚園教育要領が大切にしているのは、文字に親しみ、興味や関心をもつことです。書く練習をするかどうかは、子どもが楽しんでいるかを見ながら決めるとよいでしょう。
文部科学省の手引きによると、幼稚園教育要領・保育所保育指針・幼保連携型認定こども園教育・保育要領は整合が図られており、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」も共通の手掛かりとして示されています。施設の種類で考え方が大きく変わるわけではありません。
使うかどうかは家庭の判断です。使う場合は「生活の中で必要を感じて使う体験」とのバランスを意識し、子どもの様子を見ながら進めましょう。教材を選ぶときは、資料や体験版で内容と子どもの反応を確かめてからにすると判断しやすくなります。
まとめ
参考にした資料
- 文部科学省「幼稚園教育要領」(平成29年3月告示)第1章第2の3・第3の5、第2章「健康」「環境」「言葉」
https://www.mext.go.jp/content/1384661_3_2.pdf(確認日 2026-10-20) - 文部科学省「小学校学習指導要領」(平成29年告示)第1章総則第2の4、第2章第1節国語・第3節算数、第6章特別活動
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/05/1384661_4_3_2.pdf(確認日 2026-10-20) - 文部科学省「幼保小の架け橋プログラムの実施に向けての手引き(初版)」
https://www.mext.go.jp/content/20220405-mxt_youji-000021702_3.pdf(確認日 2026-10-20) - 文部科学省「幼保小の架け橋プログラム」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/youchien/1258019_00002.htm(確認日 2026-10-20)

