不動産所得の確定申告|必要な書類・経費になるもの・減価償却

木目のデスクに、領収書の束、クリアファイル、電卓、印鑑、ノートが並ぶ俯瞰写真 不動産投資コラム

部屋を貸して家賃を受け取るようになると、年末調整だけで済んでいた会社員も確定申告と向き合うことになります。何を収入に入れ、何を経費にでき、建物の代金をどう扱うのかを知らないと、書類をそろえる段階で手が止まりがちです。

この記事では、国税庁のタックスアンサーと申告書の書き方の手引きをもとに、申告が必要になる目安、収入と経費の範囲、減価償却の考え方、青色申告の要件を順に整理します。個別の判断に迷うときは、税務署や税理士に確認してください。

この記事でわかること

  • 会社員が家賃収入を得たときに申告が必要になる目安
  • 不動産所得の収入に含めるものと、必要経費の科目
  • 建物の減価償却と、中古物件の耐用年数の求め方
  • 青色申告の控除額と「事業的規模」の目安、準備する書類

不動産所得と申告が必要になる目安

国税庁は、土地や建物の貸付けによる所得を不動産所得としています(タックスアンサー No.1370)。金額は「総収入金額 − 必要経費」で求めます。家賃の入金額そのものではなく、経費を引いた後の金額で考えるのがポイントです。

給与を1か所から受け取り、全額が源泉徴収の対象になっている会社員の場合、給与所得と退職所得を除いた各種の所得金額の合計が20万円を超えると、所得税の確定申告が必要です(No.1900)。申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです(No.2020)。

注意したいのが住民税です。横浜市・名古屋市の案内では、20万円以下で所得税の申告がいらない場合でも、市区町村への住民税の申告は必要とされています。所得税の確定申告をすれば、住民税の申告もしたものとみなされます。

収入に含めるもの

No.1370 では、毎月の賃貸料のほかにも総収入金額に入るものが挙げられています。

  • 賃貸料(家賃・地代)
  • 名義書換料・承諾料・更新料・頭金などの名目で受け取るもの
  • 返還しなくてよい敷金や保証金
  • 共益費などの名目で受け取る電気代・水道代・掃除代など

計上する年は、契約で支払日が決まっている賃料ならその支払日、決まっていなければ受け取った日が基準です(手引き)。

必要経費になるもの・ならないもの

必要経費にできるのは、貸付けの収入を得るために直接必要で、家事上の費用と区別できるものです。国税庁の「収支内訳書(不動産所得用)の書き方」にある科目を表にしました。

科目主な例
租税公課固定資産税、不動産取得税、登録免許税、印紙税など(所得税・住民税は含まない)
損害保険料賃貸している建物の火災保険料
修繕費賃貸している建物の修繕のための費用
減価償却費建物・建物附属設備・構築物の償却費
借入金利子賃貸している建物等を取得するための借入金の利子
地代家賃賃貸している建物の敷地の地代
給料賃金建物の管理や賃料の集金に従事する使用人の給料
雑費ほかの科目に当てはまらない業務上の費用

出典:国税庁「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」(確認日 2026-10-19)

手引きは、借入金の返済額のうち元本にあたる部分は必要経費にならないと明記しています。返済予定表で利息分だけを拾いましょう。所得税・住民税や延滞税、罰金なども対象外です。

建物の価値を高めたり使える期間を延ばしたりする支出は、原則として修繕費ではなく「資本的支出」として減価償却します。

減価償却のしくみ

建物や設備は時の経過で価値が減るため、代金を一度に経費にせず、使える期間に分けて経費にします。これが減価償却です(No.2100)。土地は価値が減らない資産なので減価償却しません。購入代金のうち建物にあたる額を分けて計算する必要があります。

平成10年4月1日以後に取得した建物は旧定額法か定額法のみ、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備と構築物は定額法です。定額法の年間の償却費は「取得価額 × 耐用年数に応じた償却率 × 使用月数 ÷ 12」で計算します。取得価額には、購入代金のほか購入手数料など取得のために支払った費用も含まれます。

建物の構造住宅用の法定耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造47年
れんが造・石造・ブロック造38年
木造・合成樹脂造22年
木骨モルタル造20年

出典:国税庁「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」主な減価償却資産の耐用年数表(確認日 2026-10-19)

中古物件は「簡便法」で耐用年数を出せる

中古の建物は、取得後に使える年数を見積もって耐用年数にできます。見積もりが難しいときは、次の簡便法の年数を使えます(No.2108)。1年未満の端数は切り捨て、計算結果が2年未満なら2年とします。

  • 法定耐用年数の一部を経過した建物:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
  • 法定耐用年数の全部を経過した建物:法定耐用年数 × 20%

例:築15年の鉄筋コンクリート造の住宅を買った場合、(47 − 15)+ 15 × 0.2 = 35年。築25年の木造住宅なら、22 × 0.2 = 4.4 で端数を切り捨てて4年です(いずれも説明用の架空の例)。ただし、取得価額の50%を超える資本的支出をした場合は簡便法を使えません。

青色申告の要件と控除額

青色申告をするには、承認を受けたい年の3月15日までに承認申請書を出します。その年の1月16日以後に新たに業務を始めた場合は、開始日から2か月以内です(No.2070)。控除額は、貸付けが「事業的規模」かどうかと記帳の方法で変わります。

控除額(令和8年分まで)主な要件
最大65万円事業的規模で、正規の簿記で記帳し貸借対照表・損益計算書を期限内に提出。さらにe-Taxで申告するか、優良な電子帳簿の要件を満たして保存
最大55万円事業的規模で、正規の簿記による記帳と期限内の提出(電子申告等なし)
最大10万円上記に当てはまらない青色申告者

出典:国税庁 タックスアンサー No.2070・No.1373(確認日 2026-10-19)

事業的規模かは実質で判断されますが、建物の貸付けでは独立した室数がおおむね10室以上、または独立家屋がおおむね5棟以上なら原則として事業として扱われます(No.1373)。区分マンション数室の段階では、この目安に届かないことが多いでしょう。

令和9年分以後は見直され、国税庁のチラシでは複式簿記とe-Taxで最大65万円、一定の優良な電子帳簿の保存で最大75万円とされています。申告する年の案内で確かめてください。

準備しておく書類

  • 確定申告書と、収支内訳書(不動産所得用)または青色申告決算書(不動産所得用)
  • 勤務先の源泉徴収票
  • 管理会社からの送金明細・年間の収支報告
  • 売買契約書と精算書(建物と土地の取得価額、手数料の確認用)
  • ローンの返済予定表(利息と元本の内訳)
  • 固定資産税の納税通知書、火災保険料や修繕の領収書

よくある質問

国税庁の手引きでは、賃貸している土地・建物の不動産取得税・登録免許税・印紙税は租税公課の例に挙げられています。購入手数料などは取得価額に含まれる費用なので、内訳は税務署や税理士に確認しましょう。

承認申請書を期限までに出せば青色申告はできます。ただし事業的規模に当たらない場合、青色申告特別控除は最大10万円になり、青色事業専従者給与も使えません。

所得税の確定申告は不要になる場合がありますが、住民税の申告は別に必要です。お住まいの市区町村の案内を確認してください。

まとめ

  • 会社員は給与・退職以外の所得が20万円を超えると所得税の確定申告が必要。20万円以下でも住民税の申告は別途必要
  • 更新料や返還不要の敷金も収入。ローンは利息だけが経費で、元本の返済分は経費にならない
  • 土地は償却しない。建物は定額法で、中古なら簡便法で耐用年数を出せる
  • 青色申告の65万円・55万円は事業的規模(おおむね10室・5棟)が前提。令和9年分から見直しあり
  • 契約書・返済予定表・送金明細をそろえ、迷う点は税務署や税理士へ

参考にした資料