不動産投資の説明では、家賃収入や利回りといったプラスの面が先に語られがちです。けれども物件を持っている間には、収入が減ったり支出が増えたりする出来事も起こりえます。大事なのは、どんなリスクがあり、購入前に何を確かめておけば備えられるかを知っておくことです。
この記事では、代表的な5つのリスクを公的機関の資料をもとに整理します。文中の計算例は、説明のための架空の数字です。
5つのリスクの一覧
| リスク | 何が起きるか | 事前に確かめること |
|---|---|---|
| 空室 | 次の入居者が決まるまで家賃収入が途切れる。ローン返済などの支払いは続く | 周辺の賃貸需要、空室中も払い続ける費用の合計 |
| 家賃下落 | 築年数の経過や周辺の新しい物件との競合で、募集家賃を下げることがある | 想定家賃が周辺の相場より高すぎないか |
| 金利上昇 | 変動金利の借入れでは、見直しで返済額が変わる | 金利タイプ、見直しの時期とルール、金利が上がった場合の試算 |
| 修繕費 | 修繕積立金の引上げや一時金の徴収、室内設備の交換費用が発生する | 長期修繕計画、積立方式、既に積み立てられている額、値上げの予定 |
| 災害 | 地震や水害で建物が傷み、修理費の負担や入居者の退去が起こりうる | ハザードマップ上の位置、火災保険・地震保険の加入状況と補償の範囲 |
出典:国土交通省・日本銀行・財務省・総務省の公表資料をもとに作成(確認日 2026-10-19)
空室と家賃下落|収入が減るリスク
退去から次の入居までは家賃収入がゼロになりますが、ローンの返済、管理費・修繕積立金、固定資産税などの支払いは止まりません。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、2023年10月1日時点の全国の空き家は900万2千戸で過去最多、空き家率は13.8%でした。このうち賃貸用の空き家は443万6千戸です。全国をまとめた数字なので個々の物件の空室の起こりやすさを示すものではありませんが、借り手を探している賃貸住宅が多い地域もあることは前提にしておきましょう。
家賃も、ずっと同じ額とは限りません。建物が古くなれば、周辺の新しい物件と比べられる立場になります。収支計画では、家賃を何年後まで同額で置いているか、空室期間をどう見込んでいるかを確かめましょう。
空室対策として購入前にできること
- 最寄り駅からの距離や周辺の大学・勤め先など、借り手がいる理由を自分で調べる
- 周辺で募集中の、同じ広さ・築年数の物件の家賃と比べる
- 収支計画を「家賃が1割下がった場合」「3か月空室が続いた場合」でも計算し直す
- 入居者募集や退去時の原状回復の費用負担を、管理委託契約で確かめる
金利上昇|返済額が増えるリスク
日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を終え、短期金利を0〜0.1%程度に誘導する方針に切り替えました。その後も引上げが続き、2026年9月18日の金融政策決定会合では、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促すことを決めています(9月24日から適用)。
政策金利の変化がそのまま個々のローン金利になるわけではありませんが、変動金利の借入れは影響を受けることがあります。反映の時期や幅は契約ごとに異なるため、見直しのルールを契約書で確かめておきましょう。
例:借入残高2,000万円・残りの返済期間30年・元利均等返済の場合(架空の数字)、適用金利が1.5%なら毎月の返済額は約69,000円、2.5%なら約79,000円です。金利が1%上がると、月におよそ1万円、年間で12万円ほど支出が増える計算になります。家賃が同じなら、その分だけ手元に残るお金が減ります。
修繕費|修繕積立金の値上げと一時金
区分マンションのオーナーは、外壁や屋上、給排水管などの共用部分を計画的に直すため、管理組合に修繕積立金を払います。国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2024年6月改定)による積立方法の整理は次のとおりです。
| 積立方法 | 特長 | 注意点 |
|---|---|---|
| 均等積立方式 | 計画期間中、同じ額を積み立てる。将来の増額を組み込んでいない | 長期修繕計画の見直しで増額が必要になる場合もある |
| 段階増額積立方式 | 当初の負担を抑え、段階的に積立額を上げていく | 将来の負担増が前提。増額の合意ができず、積立金が不足する例もある |
| 修繕積立基金・一時金 | 購入時にまとまった基金を払う、修繕時に一時金を集めるなど | 購入時や修繕時に、まとまった支出が発生しうる |
出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」令和6年6月改定(確認日 2026-10-19)
ガイドラインは、安定した積立ての観点から均等積立方式が望ましいとしています。段階増額積立方式については、均等積立方式にした場合の月額を基準額とし、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内とする引上げの考え方を示しました。例:基準額が月1万円なら、初期額は6,000円以上、最終額は11,000円以内が目安です(架空の数字)。
ガイドラインには平均額の目安もあり、地上20階未満・建築延床面積5,000㎡未満のマンションでは専有面積1㎡あたり月335円が平均値、事例の3分の2が入る幅は235〜430円です。例:専有面積25㎡なら、平均値で月約8,400円です。提示された額がこれより低いときは、今後の値上げ予定を聞いておきましょう。
売買契約の前の重要事項説明では、修繕積立金の積立てに関する規約の内容と、既に積み立てられている額が説明されます(宅地建物取引業法施行規則第16条の2第6号)。室内の給湯器やエアコンなどの交換費用は、これとは別にかかります。
災害|地震や水害への備え
建物がある場所の災害リスクは、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で調べられます。「重ねるハザードマップ」では洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報などを地図に重ねて表示でき、「わがまちハザードマップ」からは市町村のハザードマップを開けます。
2020年8月28日からは、宅地建物取引業法施行規則の改正により、重要事項説明で水害ハザードマップ上の物件の所在地を示すことが義務になりました。説明の場で地図を見せてもらい、位置を確かめましょう。
地震の被害には、地震保険で備える方法があります。財務省によると、地震保険は地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失による損害を補償する保険で、火災保険に付帯して契約します。保険金額は火災保険の保険金額の30〜50%の範囲で、上限は建物5,000万円、家財1,000万円です。対象は居住用の建物(マンションの共用部分を含む)と家財です。共用部分に管理組合がどんな保険をかけているかも、総会資料などで確かめておくとよいでしょう。
よくある質問
国交省のガイドラインは、どの積立方法を採っていても、定期的(5年程度ごと)に長期修繕計画を見直し、それに基づいて修繕積立金を設定し直すことが必要としています。見直しの結果、増額になる場合もあります。
上がらないとは限りません。ガイドラインは、均等積立方式でも長期修繕計画の見直しによって増額が必要になる場合があるとしています。
まかなえるとは限りません。保険金額は火災保険の保険金額の30〜50%の範囲で上限もあり、支払額は損害の区分(全損・大半損・小半損・一部損)ごとの割合で決まります。
まとめ
参考にした資料
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月策定・令和6年6月改定)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf(確認日 2026-10-19) - 国土交通省 報道発表資料「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の改定について(2024年6月7日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000204.html(確認日 2026-10-19) - 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260918a.pdf(確認日 2026-10-19) - 日本銀行「金融政策の枠組みの見直しについて」(2024年3月19日)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240319a.pdf(確認日 2026-10-19) - 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」(2024年9月25日)
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf(確認日 2026-10-19) - 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
https://disaportal.gsi.go.jp/(確認日 2026-10-19) - 国土交通省 報道発表資料「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化」(2020年7月17日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000205.html(確認日 2026-10-19) - 財務省「地震保険制度の概要」
https://www.mof.go.jp/policy/financial_system/earthquake_insurance/jisin.htm(確認日 2026-10-19) - e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(昭和32年建設省令第12号)第16条の2
https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50004000012(確認日 2026-10-19)

