サブリース(家賃保証)とは?仕組みと契約前に確かめること

テーブルの上に、2つ折りの契約書と万年筆、その奥に小さな白いアパートの模型が置かれ、契約前に書面を読み込んでいる雰囲気の写真 不動産投資コラム

「家賃保証だから空室が出ても収入は変わらない」。サブリースの説明を受けて、そう受け止めてしまう人は少なくありません。実際には、サブリースの借上げ家賃は契約期間中でも下がることがあり、業者の側から契約を終わらせる場合もあります。

この記事では、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下、賃貸住宅管理業法)と借地借家法の条文、国土交通省のガイドラインをもとに、サブリースの仕組みと、契約前に書面で確かめておきたい点を整理します。

この記事でわかること

  • サブリース(家賃保証・一括借上げ)の契約関係とお金の流れ
  • 借上げ家賃が減額され得る法律上の理由(借地借家法第32条)
  • 業者からの中途解約と、オーナーからの解約のルールの違い
  • 2020年12月15日に施行されたサブリース規制の中身
  • 重要事項説明で確かめたい項目

サブリース(家賃保証)の仕組み

サブリースは、サブリース業者がオーナーから建物や部屋をまとめて借り上げ、それを入居者に又貸し(転貸)する形の事業です。賃貸住宅管理業法では、オーナーと業者の間の契約を「特定賃貸借契約」(一般にマスターリース契約)、転貸を事業として行う業者を「特定転貸事業者」と呼んでいます(第2条第4項・第5項)。

契約当事者お金の流れ
マスターリース契約(特定賃貸借契約)オーナー(貸す側)とサブリース業者(借りる側)サブリース業者からオーナーへ、契約で決めた借上げ家賃
転貸借契約サブリース業者(貸す側)と入居者(借りる側)入居者からサブリース業者へ、部屋の家賃

出典:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 第2条第4項・第5項(e-Gov法令検索)をもとに作成(確認日 2026-10-19)

オーナーが受け取るのは、入居者が払う家賃そのものではなく、業者との契約で決めた借上げ家賃です。金融庁・消費者庁・国土交通省の注意喚起は、一定の賃料収入が見込めることや管理の手間が減ることを長所としつつ、賃料減額をめぐるトラブルが起きているとして、リスクを理解してから契約するよう呼びかけています。

「家賃保証」でも借上げ家賃が下がり得る理由

マスターリース契約では、業者は「建物を借りる側」です。借地借家法第32条第1項は、税負担の増減、建物価格の変動その他の経済事情の変動、近くの同種の建物の家賃との比較によって家賃が不相当になったとき、契約の条件にかかわらず、当事者が将来に向かって家賃の増減を請求できると定めています。契約書の家賃が固定に見えても、減額を求められる可能性は残ります。

一方で、減額請求はこうした要件を満たさないとできません。ガイドラインでも、オーナーは請求をそのまま受け入れる義務があるわけではなく、従前の家賃を決めた事情などを踏まえて協議で相当な額を決めるものと整理されています。

例外として、契約を定期建物賃貸借(定期借家)で結び、家賃の改定に関する特約を置いた場合は、第32条は適用されません(第38条第9項)。ただしその場合は、契約期間の満了で契約が終わり、オーナーからの途中解約も原則できないことが、重要事項として説明されるべき点に挙げられています。

新築直後や退去後の募集期間に借上げ家賃が支払われない「免責期間」を設ける契約もあります。いつから支払われるのかも確認しましょう。

中途解約と更新拒絶のルール

「30年一括借上げ」とうたっていても、契約書に業者から解約できる規定があれば、期間の途中でも解約される可能性があります。反対に、普通借家契約のマスターリースでオーナーが更新を拒んだり解約を申し入れたりするには、借地借家法第28条により正当の事由が求められます。業者からは抜けやすく、オーナーからは抜けにくい構造になり得る点は、契約前に理解しておきたいところです。

ガイドラインは、家賃見直しの協議がまとまらなければ契約が終了する条項を勧誘時に告げないことも、事実の不告知の例に挙げています。

賃貸住宅管理業法のサブリース規制(2020年12月15日施行)

賃貸住宅管理業法のうち、サブリース業者とオーナーの契約を適正にするための規制は、2020年12月15日に施行されました。主な義務は次のとおりです。

条文中身
第28条 誇大広告等の禁止借上げ家賃・維持保全の方法・契約の解除などについて、事実と著しく違う表示や、実際より著しく有利だと誤認させる表示をしてはならない
第29条 不当な勧誘等の禁止判断に影響する重要な事項を、故意に告げない・事実と違うことを告げる行為の禁止。威迫や迷惑な時間帯の勧誘なども省令で禁止
第30条 契約締結前の書面交付契約を結ぶまでに、契約内容とその履行に関する事項を書面で交付して説明する(重要事項説明)
第31条 契約締結時の書面交付契約を結んだら、家賃・維持保全の方法・契約期間・更新や解除の定めなどを記した書面を遅滞なく交付する

出典:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(e-Gov法令検索)、国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」(確認日 2026-10-19)

国土交通省のガイドラインでは、広告で「家賃保証」「空室保証」などの言葉を使う場合、そのすぐ近くに、定期的な家賃の見直しがあることや第32条により減額され得ることを表示するよう求めています。利回りを保証しないのに「利回り○%」とだけ書く表示も、誤解を招くものとして挙げられています。

これらの規制は、業者から勧誘を任された建設会社や不動産会社などの「勧誘者」にも及びます。また、重要事項説明から契約締結までには、1週間程度の期間を置くことが望ましいとされています。その場で署名を求められても、書面を持ち帰って読み返しましょう。

契約前に書面で確かめたいこと

ガイドラインの重要事項説明の記載事項と注意喚起をもとに、確認したい項目をまとめます。

  • 借上げ家賃の額と、その設定根拠(近くの同種物件の家賃相場が示されているか)
  • 家賃改定のタイミングと、改定日以外にも減額請求があり得ることの記載
  • 免責期間の有無と長さ(新築時・退去後の募集時)
  • 契約の類型(普通借家か定期借家か)と契約期間、更新の方法
  • 業者から解約できる条件、違約金や損害賠償額の定め
  • 修繕・原状回復の費用をどちらが負担するか、施工業者の指定があるか
  • 固定資産税など、所有者として負担し続ける費用

注意喚起では、ローンの返済も含めた事業計画とリスクをオーナー自身が理解する必要があるとしています。借上げ家賃が下がった場合でもローンを返していけるか、例えば「借上げ家賃が1割下がったら毎月の手取りはいくらになるか」を、自分の数字で試算しておくと判断の材料になります。

よくある質問

普通借家契約の場合、借地借家法第32条第1項は契約の条件にかかわらず家賃の増減を請求できると定めており、そうした特約があっても減額を請求される可能性はあります。定期借家で家賃改定の特約を置いた場合は第32条が適用されませんが、期間満了で終了するなど別の条件がつきます。

減額請求には、経済事情の変動などで家賃が不相当になったという要件があります。ガイドラインでも、オーナーは請求をそのまま受け入れる義務はなく、協議で相当な家賃を決めるとされています。業者は減額の根拠を書面で示して説明する必要があるので、内容を確かめ、まとまらないときは弁護士などに相談してください。

賃貸住宅管理業法第30条により、業者は契約を結ぶまでに書面を交付して説明しなければなりません。ガイドラインでは、説明から契約締結までに1週間程度の期間を置くことが望ましいとしています。

まとめ

  • サブリースは業者が一括で借り上げて転貸する仕組み。オーナーの収入は契約で決めた借上げ家賃
  • 借地借家法第32条により、家賃保証をうたう契約でも借上げ家賃が減額され得る
  • 業者からは契約で中途解約でき、オーナーからの更新拒絶・解約には正当の事由が要る
  • 2020年12月15日施行の規制で、誇大広告・不当な勧誘の禁止と重要事項説明が義務になった
  • 契約前に重要事項説明書を受け取り、減額や解約の条件を自分の数字で試算して確かめる

参考にした資料