勤務先への電話、街頭アンケートのあとの連絡、知り合ったばかりの異性からの誘い。投資用マンションの勧誘は、思いがけない入り口から始まることがあります。不動産投資の失敗は物件選びの話になりがちですが、国民生活センターには「断りきれずに契約してしまった」という相談も寄せられています。
この記事では、国民生活センターの注意喚起と宅地建物取引業法・消費者契約法の条文をもとに、勧誘の流れ、禁止されている勧誘、クーリング・オフの条件、相談先を整理します。
国民生活センターに寄せられた相談
国民生活センターは2019年3月、投資用マンションの強引な勧誘について注意を呼びかけました。全体の相談件数は2013年度の2,321件から2018年度(2019年2月末までの登録分)の1,350件へ減っていた一方で、20歳代の相談は160件から405件へ約2.5倍に増えていました。平均契約購入金額は2,000万円を超えて推移し、相談の多くは契約した後に寄せられています。
公表された相談事例と問題点から、勧誘の入り口とその後の流れを整理すると次のとおりです。
| 入り口 | 相談事例にみられた流れ |
|---|---|
| 勤務先・自宅への電話や訪問 | 「説明だけ」と言われて会ったところ勧誘が長引き、断りきれずに申込書へサインした |
| 街頭アンケート・名刺交換 | 後日電話があり、事務所に呼ばれて夕方から翌日未明まで勧誘された。「事務所での契約なのでクーリング・オフはできない」と言われた |
| 合コンなどで知り合った異性 | 呼び出された先で投資用マンションを勧められた(デート商法) |
| ローンの申込み | 年収や資産を偽る、投資用なのに居住用と申告するよう事業者に指示された |
出典:国民生活センター 報道発表資料(2019年3月28日)(確認日 2026-10-19)
勧誘の場では「値上がりする」「家賃収入が老後の資金になる」「節税になる」といった利点が強調される一方、価格の下落や家賃収入の減少についての説明が足りないケースがあったと指摘されています。物件を見せないまま契約を急がせる例もありました。
デート商法と「断ったら関係が終わる」という圧力
恋愛感情を利用した勧誘は、相手が販売する側の人だと気づきにくく、断ることが関係を壊すように感じさせられてしまうのが特徴です。
消費者契約法は、社会生活上の経験が乏しい消費者が勧誘する人に好意を抱き、相手も同じ気持ちだと誤信していることを知りながら、それに乗じて「契約しなければ関係が破綻する」と告げて結ばせた契約を取り消せると定めています(第4条第3項第6号)。帰りたいと伝えたのに帰らせてもらえないまま結んだ契約も、取消しの対象です(同項第2号)。
この取消権は、追認できる時から1年、契約の時から5年を過ぎると時効で消滅します(第7条第1項)。あてはまるかどうかは事情ごとに判断されるので、おかしいと気づいた時点で相談窓口に連絡しましょう。
宅地建物取引業法で禁止されている勧誘
宅地建物取引業者の勧誘には、法律と施行規則でルールが決められています。宅地建物取引業法施行規則第16条の11第1号は、契約の勧誘に際して次の行為を禁じています。
- 勧誘の前に、業者の名称、勧誘する人の氏名、契約の勧誘が目的であることを告げない
- 契約しない意思(勧誘を続けてほしくない意思を含む)を示したのに、勧誘を続ける
- 迷惑を覚えさせるような時間に電話をかけたり、訪問したりする
- 深夜や長時間の勧誘など、私生活や業務の平穏を害する方法で困惑させる
- 正当な理由なく、契約するかどうかを判断するための時間を与えない
法律本体でも、利益が生じることが確実だと誤解させる断定的な判断を示すこと(第47条の2第1項)、契約させるために相手を威迫すること(同条第2項)、重要な事項について故意に事実を告げなかったり事実と違うことを告げたりすること(第47条第1号)が禁止されています。
電話がかかってきたら、まず会社名と担当者の名前を聞き、契約するつもりがなければ「契約しません。今後の連絡もいりません」とはっきり伝えましょう。日時、相手、言われた内容をメモしておくと、相談するときの材料になります。
クーリング・オフができる条件
宅地建物取引業法第37条の2は、宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約で、事務所等以外の場所で買受けの申込みや契約をした人は、書面で申込みの撤回や契約の解除ができると定めています。業者はこれに伴う損害賠償や違約金を請求できず、受け取った手付金などを速やかに返さなければなりません。
| 確かめる点 | 中身 |
|---|---|
| 売主 | 宅地建物取引業者が自ら売主であること |
| 場所 | 業者の事務所、継続的に業務を行う施設、案内所などの「事務所等」以外で申し込んだこと。自分から申し出て自宅や勤務先で説明を受けた場合は「事務所等」に含まれる |
| 期間 | 撤回等ができることとその方法を書面で告げられた日から数えて、8日を経過するまで |
| できなくなる場合 | 物件の引渡しを受け、かつ代金の全部を支払ったとき |
| 方法と効力 | 書面で行い、その書面を発した時に効力が生じる |
出典:宅地建物取引業法第37条の2、同法施行規則第16条の5・第16条の6(e-Gov法令検索)(確認日 2026-10-19)
喫茶店やレストランは、施行規則が定める「事務所等」の場所には挙がっていません。反対に、業者の事務所に呼ばれて契約した場合は原則としてこの制度は使えず、国民生活センターもそうした呼び出しのケースを挙げています。その場合でも、消費者契約法の取消しなど別の手段を検討できることがあります。
業者は撤回等ができることを告げるとき、8日を経過する日までは書面で撤回・解除できることなどを記載した書面を交付しなければなりません(施行規則第16条の6)。また、第37条の2の規定に反する特約で買主に不利なものは無効です(同条第4項)。「クーリング・オフしない」という書面にサインさせられていても、まずは相談してください。
困ったときの相談先
相談に行くときは、契約書、重要事項説明書、名刺、メールやメッセージの記録をまとめておくと話が早く進みます。
よくある質問
かまいません。国民生活センターは、契約するつもりがなければ会わずにきっぱり断るよう呼びかけています。断った後も勧誘を続けることは、宅地建物取引業法施行規則で禁止されています。
従ってはいけません。国民生活センターは、年収や資産、利用目的を偽って申告すると金融機関から一括返済を求められる可能性があり、事業者に指示されたとしても返済の義務は借りた本人にあると注意しています。
数え始めるのは、撤回等ができることとその方法を書面で告げられた日です。その日から数えて8日を経過すると使えなくなります。書面を受け取っていない、内容がよく分からないという場合は、消費生活センターに相談してください。
まとめ
参考にした資料
- 国民生活センター「20歳代に増える投資用マンションの強引な勧誘に注意!」(2019年3月28日)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20190328_1.html(確認日 2026-10-19) - 同 報道発表資料(PDF)
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20190328_1.pdf(確認日 2026-10-19) - e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(昭和27年法律第176号)第37条の2・第47条・第47条の2
https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176(確認日 2026-10-19) - e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(昭和32年建設省令第12号)第16条の5・第16条の6・第16条の11
https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50004000012(確認日 2026-10-19) - e-Gov法令検索「消費者契約法」(平成12年法律第61号)第4条・第7条
https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061(確認日 2026-10-19) - 消費者庁「消費者ホットライン」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/(確認日 2026-10-19) - 国土交通省「都道府県に関する窓口」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000019.html(確認日 2026-10-19) - 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」
https://etsuran2.mlit.go.jp/TAKKEN/(確認日 2026-10-19)

