英語学習に必要な時間の目安と続け方|社会人の学習計画の立て方

木目のデスクに砂時計、チェック印だけが並んだノート、マグカップ、小さな観葉植物が置かれ、毎日少しずつ積み重ねている雰囲気の写真 英語コーチングコラム

「英語を話せるようになるには何時間かかるのか」「3か月あれば足りるのか」。学習を始める前に、ゴールまでの距離を知りたいと考えるのは自然なことです。ネットで調べると、具体的な時間数がまるで決まった答えのように紹介されていることもあります。

ただ、その数字がどこから来たのか、どんな条件で出されたのかまで確かめると、印象はかなり変わります。ここでは、よく引用される米国務省の数字と国内の公的統計を出どころまでさかのぼり、自分の場合の目安をどう組み立て、どう続けるかを考えます。

この記事でわかること

  • 米国務省FSIが公表している言語別の学習期間と、その前提条件
  • その数字を日本語話者の英語学習に当てはめるときの注意点
  • 総務省の統計に表れた、日本の学習・自己啓発の時間
  • 自分の目安を出す手順と、学習を続けるための工夫

よく引用される数字の出どころは米国務省の外交官研修

英語の学習時間の話でたびたび登場するのが、米国務省の外交官研修機関(Foreign Service Institute、FSI)が公表している言語別の学習期間です。国務省の公式ページでは、言語を4つのカテゴリーに分け、それぞれの習得にかかる期間を次のように示しています。

区分期間授業時間主な言語の例
カテゴリーI24〜30週552〜690時間フランス語、スペイン語、イタリア語など英語に近い言語
カテゴリーII約36週828時間ドイツ語、インドネシア語など
カテゴリーIII約44週1,012時間ロシア語、タイ語、ベトナム語など
カテゴリーIV88週2,200時間日本語、韓国語、中国語、アラビア語

出典:U.S. Department of State「Foreign Language Training」をもとに作成(確認日 2026-10-20)

カテゴリーIVは、英語を母語とする人にとってとくに難しい言語と説明されています。同じページには、この期間は学習者が政府共通の言語能力尺度(ILR)で、話す・聞くを合わせた評価が「3」に届くまでに通常見込まれる時間であること、典型的な1週間は授業23時間と自習17時間であること、実際の期間は本人の適性や過去の学習経験などによって変わることも書かれています。ILRの「3」は、実務や社会的な話題について、改まった場でも普段の場でも、たいていの会話に効果的に参加できる水準と定義されています。

日本語話者の英語学習にそのまま当てはめない

「日本人が英語を身につけるには2,200時間」という言い方を見かけることがありますが、上の表は英語を母語とする人が外国語を学ぶ場合の数字です。逆方向にもそのまま成り立つかどうかを示したものではありません。ほかにも、次の点で一般的な社会人の学習とは前提が違います。

  • 表の時間は授業の時間で、週17時間ほどの自習はさらに別にある
  • 仕事として毎週まとまった時間を研修にあてる、集中型の訓練が前提
  • 学習を始める時点で、その言語をほとんど知らない人も含まれる
  • 到達点は仕事で幅広い会話をこなせる高い水準に置かれている

日本で学校教育を受けた人は、すでに一定の英語の授業を受けています。一方で、ゴールを日常会話に置くのか、会議での発言に置くのかでも、必要な量は大きく変わります。FSIの数字は「言語の距離によって必要な時間が大きく違う」ことを知る材料として使い、自分の時間数として受け取らないのが妥当です。

統計で見る、日本の学習・自己啓発の時間

では、実際にどのくらいの時間が学習に使われているのでしょうか。総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査」(2021年10月20日現在で実施)には、次のような結果があります。

  • 10歳以上の人の1日の生活時間(週全体平均)のうち、学業以外の「学習・自己啓発・訓練」は13分
  • 過去1年間に何らかの学習・自己啓発・訓練をした人は39.6%
  • その種類別に見ると、「英語」をした人の割合は男性13.5%、女性12.2%
  • 「英語」の学習の目的は「自分の教養を高めるため」が最も多い

1日13分という値は、学習をしなかった人も含めて平均したものです。それでも、仕事や家事のあとに学習の時間をまとまって取るのは簡単ではないことがうかがえます。必要な時間を考える前に、まず自分が使える時間を正直に見積もることが出発点になります。

自分の学習時間の目安を出す3つの手順

手順1:ゴールを場面と行動で書く

「英語ができるようになる」では、どこまで進めばよいか判断できません。例:「取引先との打ち合わせで、こちらの提案を3分ほどで説明し、質問に答えられる」のように、使う場面と行動まで書きます。今の自分との差が見えると、何を優先するかも決めやすくなります。

手順2:1週間の空き時間を書き出す

理想の時間ではなく、実際に確保できる時間を数えます。通勤の移動、昼休み、寝る前など、細切れの時間も含めて書き出してみてください。

時間帯(例:架空の会社員)1回回数/週週の合計
平日の朝(出勤前)20分5回100分
平日の通勤(聞く練習)15分5回75分
休日の午前60分2回120分
合計――295分(約4.9時間)

※計算のしかたを示すための架空の例です。

この例なら、1か月(4週)で約20時間、半年で約118時間です。こうして先に使える時間の総量を出しておくと、ゴールまでの計画が現実的かどうかを判断できます。

手順3:途中で測り、配分を直す

ゴールまでに何時間かかるかは、今の力とゴールの差、練習の中身によって人ごとに違い、最初から正確には決められません。区切りの時期に、録音した自分の話し方や模擬テストなどで現在地を確かめ、時間の配分を見直していきます。

学習を続けるための工夫

  • 「いつ・どこで・何を」を固定する(例:朝食のあと、台所のテーブルで音読10分)
  • やった日だけ印をつける。時間より、続いた日数を目で見えるようにする
  • 忙しい週の最低ラインを決めておく(例:1日5分だけ聞く)
  • 休む日をあらかじめ予定に入れ、休んだことを失敗と数えない
  • 1か月に一度、記録を見返して内容と量を調整する

3か月という区切りは、検索でもよく見かけます。期間を決めること自体は振り返りの節目として役に立ちますが、3か月で到達できる水準は、1日に使える時間や開始時の力で変わります。広告や説明で「◯か月で」という表現を見たら、1日あたりの学習時間や、もともとの英語力などの前提がどう書かれているかを確かめましょう。

よくある質問

全員に共通する正解はありません。まず1週間の空き時間を書き出し、無理なく続けられる量を決めるのが現実的です。少ない時間でも毎日続け、1か月ごとに記録を見て増やせるかどうかを判断する方法があります。

米国務省が公表している2,200時間は、英語を母語とする人が日本語などの言語を学び、高い水準に届くまでの授業時間の目安です。日本語を母語とする人が英語を学ぶ時間として示された数字ではないため、そのまま当てはめないほうがよいでしょう。

通勤や家事の時間に聞く練習をする、休日にまとめて取り組むなど、時間帯ごとに練習の種類を分ける方法があります。平日の最低ラインを短く決めておくと、忙しい時期でも学習が途切れにくくなります。

まとめ

  • FSIの2,200時間は、英語母語話者が日本語などを学ぶ場合の授業時間の目安
  • 授業とは別に自習があり、集中型の研修が前提。日本語話者の英語学習には直接当てはまらない
  • 統計では、学業以外の学習・自己啓発・訓練は1日平均13分(2021年・10歳以上)
  • 自分の目的と使える時間から計画を立て、途中で測って直す
  • 期間をうたう説明は前提条件を確かめ、契約前に書面で内容を確認する

参考にした資料